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昼下がりの名古屋は、むしむしと暑かった。
名古屋から西へ進む道は、国道23号(名四国道)か国道1号(東海道)である。
去年は23号の方を走ったので、今回は1号線を走った。
1号線は、さすがに交通量はかなり多いけど、道幅は広くて、
歩道にも自転車が快適に走るだけの幅があったので、23号線よりも楽に走れたと思う。
途中で、1号線から25号線へ移り、奈良方面を目指す。
そして、道の駅「関宿」にたどり着いたとき、時刻はもう午後10時だった。
辺りは真っ暗で、今日はここでストップしようか迷ったけど、
道の駅「伊賀」までは、もうあと13kmだったので、
山道を進み続けることにした。
旧道の25号線には、車がほとんど走っていなくて、街灯もないので、道がほんとに暗い。
夜間走行時は、百均で買ったLEDライトを手に持って走っていて、普段はそれで十分明るいのだけど、
もう電池残量が少ないようで、今日は、頼りない光り方をしている。
半月よりは少し大きい、月明かりが頼りの夜間走行となった。
「暗いなぁ。」
暗い夜の山道を、ゆっくり上っていく。
民家もなくなり、車も通らないので、とても静かだった。
ガサガサッ!!
突然、すぐそばの草むらで、何かが動いた。
ビクッ!(゚ロ゚;)!?
姿はよく見えなかったけど、遠ざかっていくその何かは、
鹿だと思われる。
「あ~びっくりした。」(ビビッた。)
自転車は静かに進むので、鹿もそばに行くまで気づかないらしい。
「びっくりする度に、人間はビタミンCを1000mg消費しちゃうんだよなぁ。」
なんていう話を思い出しながら、ふと、最近見たニュースを思い出した。
"アラスカで、親子二人がツキノワグマに喰い殺される"
熊に食べられている最中、その子は母親に携帯で電話し、
最後のお別れをしたらしい。
「うわ~。ツキノワグマも、十分恐ろしいんだなぁ。」
北海道の旅では、ヒグマに遭遇しないかとドキドキしながら走っていたけど、
本州にいるツキノワグマも、なかなかコワいようだ。。。
「まさか、この辺でもツキノワグマが出たりして…。」
チラッとよぎったその不安が、山道を進むに連れて大きくなっていった。
"熊出没注意"の看板はなかった。
でも、冬眠前の熊が、餌を求めて活発に動いてるかもしれない。
もし熊に遭遇したらどうしよう。
熊は時速60kmで走れるらしい。
とても逃げきれない。
でも、坂道を下るように走るのは苦手らしい。
なら、この道を下るようにこいで逃げれば大丈夫だろう。
いや、後ろから襲われたらどうしよう。
そのときは、このガソリンをまいて、素早く火をつけて脅かして…。
襲われる前に、そんなにうまく動けるかな。
そのときは、この金剛杖を振り回して闘うか。
いや、熊の脂肪の厚さは10cm以上だから、こんな杖で殴っても効かないか。
ナイフはすぐ取り出せる位置にあるから、噛まれる瞬間に眉間に刺せれば、あるいは…。
そんなにうまく刺せるかな。
むしろガソリンをかけて…。
そんな緊急時シュミレーションをしながら、暗い山道を進む。
ガサガザッ!!
「うわっ!」(゚ロ゚;)!?
また鹿だった。今度ははっきり見えた。
「おどかすなよ~。」
またビタミンCが1000mg失われた。
木の影が黒い塊の様に見えて、なんとなく熊がうずくまっているような気がする。
完全にビビッていた。
峠が近づいてきた頃、舗装路が砂利道に変わった。
すると急に、動物園で嗅ぐような"動物臭"が鼻をついた。
「なんだこの臭い!?まさか、熊!?」
ビビった俺に、緊張が走る。
ガサガサッ!!
うわぉ!
草むらから激しい物音がして、また鹿が崖を走り去っていった。
ビタミンCが、ますます失われていく。
「鹿だらけだなコノヤロ~!」
熊じゃないことにほっとしつつ、鹿に驚かされることに腹を立てつつ、
暗い山道で、一人ドキドキ。
山道をこいで上る汗と、鹿にビビった冷や汗をかきながら、
30分ほどかけて、ようやく峠を越えた。
「あ~、やっと下り坂だ♪これでもう、熊には襲われないだろう。」
熊なんか全然いなかったのに、ほんとにほっとした。
それにしても、交通量の少ない山道というのは鹿だらけで、
峠を越えて下りだしたときは、5mくらい横を、鹿が4頭も併走して走ってたし、
民家が見えてからも、畑に鹿がいるのを見かけた。
よくわからないけど、鹿肉を食べたいと思った。
見えない(存在しない)熊の恐怖とお別れして、
道の駅「伊賀」に着いたのは、午後11時過ぎだった。
(手前1.5kmで、後輪がパンク。今回の旅2度目。)
夜の山道を走るのは、もうやめよう。
ビタミンCが足りなくなる。
【走行距離:97km】
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