さっきまで雨が降っていたのに、
今拾い集めた衣類が全く濡れていなかったので、
[もしかしたら、まだそんなに遠くへは行ってないかもしれない。]
と思った。
そして、500~600m走ったところで、道路脇に自転車を発見!
歩道には、今までに立ち寄った場所の地図やチケットが散乱していて、
貴重品を入れた袋も落ちていた。
だが、パスポート、予備の財布、小銭入れ,
パソコンやiPhone、カメラなどの高価なものは、当然のように全て失くなっていた。
ますます絶望感が走る。
うぉぉぉ~!
ふと見ると、
すぐ横の河原に、残りの荷物が全てぶちまけられていた。
ここだ。
犯人は、ここで荷物を物色したんだ。
落ちてる地図やチケットが濡れていないので、
やっぱり、ついさっきまで、犯人はここにいたらしい。
見つけたら、死ぬほど殴ってやろうと思っていた。
でも、辺りにはもう人影がない。
少しだけ、遅かったか!
絶対に、街の方へ行ったはずだ。
荷物をかき集めてサイドバッグに詰め、自転車に乗って街を目指した。
サドルが低く下げられていた。
たぶん一人だ。
そして、小柄なやつだ。
わざわざサドルの調節をして、俺のケーン号に勝手に乗っていったかと思うと、
ますます怒りが湧いてきた。
見つけたら、**してやる。
自分はきっと、鬼のような形相をしていたと思う。
"パソコンを持った小柄なやつ"
を探しながら、市街地への最短ルートを自転車で追った。
しかし、市街地側へ川を渡る橋がすぐ近くにあったため、
街なかへ逃げ込むまでの道のりは、わずか300mほどだった。
市街地に入ると、歩道にも、商店の中にも人があふれている。
ダメだ、見つかりっこない。
犯人がよほどのアホでない限り、
さっき盗んだ自転車に乗っている俺の前には、姿を見せないだろう。
それでもあきらめず、一応街中をウロウロ探し回ったけど、
やはりムダなあがきだった。
くそっ!!
自転車と大半の荷物が見つかったことで、
描いていた"最悪の状況"よりはだいぶマシになったけど、
さっき見た感じでは、所持金の全てと、電子機器のほとんどが失くなっていた。
決して、喜べる状況ではない。
頭を冷やして、次の最善策を考えた。
クレジットカードが1枚、盗られている。
まずは、それを悪用されるのを防がなくては。
それが第一だと考えて、国際電話をかけられる場所を考えた。
が、思いつかない。
公衆電話は、街なかでほとんど見かけないし、
果たして、それで国際電話をかけられるかもわからない。
広東省の人は、いい人が多いとは思っていたけど、
それでも、こんなに切羽詰まった状態の外国人を、
ちゃんと助けてくれそうな人に出会うのには、かなり時間がかかりそうだと判断した。
(つまり、ほとんどの人は相手にしてくれないだろうということ。)
やっぱり、まずは警察だ。
そう思って、警察署を探した。
近くの商店に入って、場所を聞きまくった。
[ポリース(Police)在哪里??]
と聞いても、やはり全く理解してもらえず、相手にもされない。
本を出して発音を調べるのが面倒だったので、
手のひらに[警察]と書いて、見せて回る。
そんな必死な自分を、冷たい人は、本当に冷たくあしらう。
[ああ?何言ってんだよ?わかんねーよ。あっちへ行ってくれ。]
こういう人が、半分くらい。
親切な人も多いけど、[親切]の意味すら知らないような人も多い。
残り半分の、まともな人の導きのおかげで、
20分くらいで、ようやく派出所が見つかった。
[我的信用卡偷了。我要国际电话。我要取消我的信用卡。]
日本語も英語も、ほぼ100%通じないので、
知ってる意味の単語を適当に組み合わせて、なんとか、
[クレジットカードが盗まれた。国際電話をかけたい。カードの停止をしたい。]
と、伝えた。
すると、
[ここでは、国際電話はかけられない。大丈夫だ、中国ではお前のカードは使えない。]
なんてことを言われた。
そんなわけないだろ!!
大丈夫なわけがない。
こっちが必死なのに、向こうは笑いながら、終始ヘラヘラしていて、
[日本人か?自転車で来たのか?どこへ行ったんだ?どれくらいかかった?いくらかかった?]
などと、興味本位で関係ない質問をしてくる。
その無神経さに頭にきつつも、
[頼むから、国際電話をかけられるところだけでも教えてくれ。]
そう頼むと、[東城国際酒店]ならあるだろうと教えてくれた。
場所を聞くと、ゴルフのカートみたいな警察車輌に自転車ごと乗せてくれ、
[東城国際酒店]まで連れていってくれた。
困っている人の見方になってくれるいい人たちなのだろうけど、
対応の仕方がいちいち腹立たしく感じた。
これも、日本人との感覚、文化の違いなんだろう。
(3)へつづく。